医療用スクラブとは新しい形の白衣

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スクラブと聞いて研磨剤の微粒子の入った洗顔料で顔を洗うこと(スクラブ洗顔)かと思った人もいることでしょう。もちろんそれもスクラブですが、今回の話題は医療機関に勤務する人が身に着ける上衣の話題です。医療機関に勤める人の衣服と言えば白衣が代表的ですが、スクラブはその白衣の進化形なのです。

なぜそれがスクラブなのかは、追々お話ししていきます。

医療スクラブの「スクラブス」

スクラブは半そでシャツ

スクラブは半袖の上衣です。基本的にはかぶって着るタイプで、首元はVネックになっています。海外の医療ドラマなどでよく見る白衣の発展形で、色に豊富なバリエーションがあるのが特徴です。

メーカーによっては切り替えやストライプなどの配色もありますし、キャラクターが描かれているポップなデザインの物もあります。

スクラブ本来の姿は全体的にゆったりとしたシルエットです。Vネックの襟元だけでなく広い袖口や裾の開きと相まって通気性に優れています。ハードな動きになることが多い医療の現場において、動きやすく熱がこもらない構造は効率的な活動や医療者の健康にも資する物となっているのです。

一方、その動きやすさのまま冬場などに着用できるよう「長袖スクラブ」と言う商品も開発されています。「Vネック半袖上衣」と言う本来の定義からは外れますが、下に長袖のシャツを着て上からスクラブを着るというスタイルに違和感を覚えたり、重ね着によって動きが制限されたりすることを嫌ったりする人には便利な服です。

また、長袖スクラブはニットで作られていることもあります。

素材は化学繊維か混紡のものが多い

スクラブに用いられている素材は強度があることが最優先されています。スクラブと言うのは「ゴシゴシこする」と言う意味で、工業クリーニングなど清潔さ最優先で行われる激しい洗濯にも耐える素材を使い、しっかりした縫製で作られているのがスクラブなのです。

また、従来の白衣やケーシーチュニックなどより少し安価なため、洗い替えを多めに準備できることから、汚れが少しでも気になったらどんどん洗えるのがメリットと言えるでしょう。そして、頻回のクリーニングにも耐えて型崩れや破れなどを起こしにくいことが特徴です。

素材としてはポリエステル100%のものや、綿・ポリエステル混紡のブロード、ポリエステル・キュプラ混紡生地などがよく用いられます。かぶって着るタイプが大半であることから、ストレッチタイプの生地がよく使われます。

さらに、透湿・速乾・防透などの機能性加工が施されていることが多いです。薄くて軽いのは着ていて楽ですが、透け感があるものは困ります。そのあたりにもしっかり配慮されているのがポイントと言えるでしょう。

カラフルなのがスクラブの特徴

スクラブは新しいタイプの白衣ではありますが、白であることの方がレアケースと言えるでしょう。それでも初期のころはパステルトーンや中間色が多かったのですが、2019年現在カタログを見てみると白やパステルカラーはもちろん、原色ではないものの黒や赤などに近い、医療機関ではためらわれるような色のスクラブも存在しています。

カラフルさは様々な用途で便利に使えます。最もわかりやすいのは職種で色を変えることです。ドクターは白、ナースは水色、検査技師はライトグリーン、療法士は紺、一般職員はツートーンなどにしておくと、患者が話しかける相手に迷わなくて助かります。

また、職域で分けるのも便利でしょう。病院であれば、外来と病棟で分けておくのも一つの方法です。大きな病院なら看護師を一般外来・看護外来・一般病棟・オペ室・ICUなどの専門領域に分けると良いかもしれません。

スクラブはメーカーによって25色以上のカラーバリエーションを準備しているケースもありますからいろいろな工夫が考えられます。ただし、あまり細分化しすぎるとかえって混乱を招く危険性もありますから、そのあたりはよく検討して下さい。

ファッショナブルなスクラブも増えている

スクラブは白衣の専門メーカーだけでなく、多くのファッションブランドも参入しています。複数の有名下着メーカーやスポーツ衣料品メーカーも参入しているため、デザイン的に優れたものが増えてきています。例えば、被るタイプの物だけでなく、ジップタイプも人気のようです。

センタージップはもちろん、フロントサイドジップもあります。また、ジッパーを利用して左右で色の切り替えを行っていたり、ヨークの部分で色の切り替えを行っていたりするツートーンのスクラブもあります。機能的にも医療者用に考慮された構造が使われています。

医療機関と言えば院内通信用にPHSを持ち歩くことが一般的ですが、スクラブにPHS専用ポケットが設けられているものも少なくありません。もちろんポケットが伸びたりしないような構造が工夫されています。さらに、医療者はポケットを活用することも多いので、胸に付けられるPHSポケットとは別に、裾の両サイドにポケットが設けられていることが多いです。

いずれのポケットも伸び防止に加えて物の出し入れがしやすいような角度が考慮されているデザインをよく見かけます。

医療の現場でスクラブタイプの白衣に人気がある理由

レディース・メンズに分かれたものもある

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スクラブは基本的に男女共用ですが、ニーズに応じて女性用・男性用のデザインを行っているものもあります。特に女性用のスクラブでは被って着ることを避けるための工夫が行われているものが多く見られます。これは髪や化粧を乱さずに脱着できることが重要になるからです。

出退勤時ならゆっくり着替える余裕もありますが、医療者は業務中に衣服が汚れてしまって着替えることも多い職業です。そんな時に髪や化粧のことをかまっている余裕はありません。かと言って、整えられていない髪を振り乱していたのでは患者に不安を与えてしまいます。

そこでジップタイプのスクラブが便利になります。被らないので髪や化粧が乱れません。さらに、ジップタイプの場合体形に合わせたデザインの方が好まれることもあって、男女別になっていることが比較的多く見られます。

その他にも、下着メーカーが関係した製品では背中にファスナーが付いていて、履く形で着用できる女性専用スクラブと言うものも開発されています。

ボトムスとの組み合わせでよりファッショナブルに

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白衣高血圧と言う言葉があるように、白衣と言うものはどうしても患者に緊張感を与えてしまう作用があるようです。それに比べるとスクラブはカジュアルな感じのデザインですし、カラフルでおしゃれなため無用な緊張感を与えません。

そういった部分では医療者の着用するユニフォームも治療に関して大切な意味を持っていると言えるでしょう。また、スクラブは上衣ですから、組み合わせるボトムスを検討しないといけません。単色のスクラブを中心に、共色のパンツが発売されているケースは多いのでそれを組み合わせても良いでしょう。

一方、共色のものは規律正しいイメージにはなりますが、制服感が強くて緊張を生むかも知れません。スクラブが濃色系統なら白やパステルグレーなどの淡色系のパンツを、スクラブが淡色系統なら黒や紺などの濃色系のパンツを合わせると、全体的にひきしまったイメージになりつつも、おしゃれで緊張感を呼ばない組み合わせになるでしょう。

スクラブの持つ大切な性能は、動きやすく常に清潔にできる機能性と、頻回の洗濯に耐える耐久性です。さらに、着用者の属性を分類できる有用性と患者にリラックスしてもらえる雰囲気などを併せ持った機能性衣料がスクラブの本質だと言えるのです。

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